yellow ribbon
「傘貸せ」
「あ、はい…」
「お前がさすと俺の首が痛い」
相変わらず酷い。
なのに全然嫌じゃなくて、むしろちょっと嬉しいなんて思っちゃったりして。
なんでだろう。なんでかな。
にやけそうになるのをグッとこらえて頬に力を入れた。
校門を出て右が私の家、左が夏樹くんの家の方向になる。
なのに。
夏樹くんは右に曲がろうとする。
「反対だよ?」
「…うるさい」
ぶっきらぼうにそう言う夏樹くんの顔はほんのり赤かった。
「傘借りて送らせるほど人でなしじゃねーよ」
「え、」
「お前送ってってから傘借りて帰ればいいだろ」
サラッと言われた一言。
私は申し訳なさよりも嬉しさが勝ってしまった。
だって…それじゃあ明日傘返さないといけないんだよ?
また私と話さないといけないんだよ?
夏樹くんがそこまで考えていたとは思わないけど、それでも私は嬉しかった。
「ありがと…」
「…別に」