yellow ribbon


入学式が終わって帰宅しようと玄関で靴を履き替えた時。
足下しか見ていなかった私は誰かにコツンとぶつかった。


すぐに頭を上げた。
謝るつもりで。

だけど、謝罪の言葉はつまった。

ーーーそこにいたのが小枝夏樹だったから。


バッチリ目が合ってしまった。
卒業式の日に言われた言葉がフラッシュバックする。

多分、手は震えていた。


「あ…ご、ごめ…ごめ、なさ…」


私の不注意でぶつかってごめんなさい。

そんな丁寧な謝罪は出来なかった。

そして必要も無かった。


…彼は私の言葉を最後まで聞くこともなく背中を向けて行ってしまったのだから。


突っかかってきたらどうしよう、とか。
また酷いことを言われたらどうしよう、とか。
同じクラスじゃなくて良かった、とか。

何を馬鹿なことばかり考えていたのだろう。

彼は私のことなんて…覚えてすらいなかったのに。



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