君と想い出をもう一度
洞窟は城の敷地内にあるようだ。


と言っても王家の城、目と鼻の先と言うほど近いわけではないのだが。


三十分ほど歩いただろうか、森のなかに岩肌が剥き出しになった箇所があった。

夜の闇の中でパックリと口を開けている、あれが洞窟だろう。


「意外と近いんだねー」

「そうだな」


ミュウとラルムが意外そうに穴を眺める。


「王家に伝わる秘宝が置いてありますからね」

ボルドーも神妙に見上げる。

「秘宝、ですか」

ラルムがピクリと眉を上げた。


初耳だ。


「ええ、何でも願いが叶うという石です。…先代はお入りになりませんでしたが」


先代、というのはラルムの父のことだろう。


「願いは本当に何でも叶います」


慎重に、という意味だろうか、ボルドーがもう一度付け加えた。


「行くか、ミュウ」

「うんっ」


二人は中に足を踏み入れた。


「地味~」


ボルドーが明かりをかざした瞬間ミュウがぼやいた。
確かに殺風景なただの洞窟だが、遠慮も何もない発言である。


「何か置いてある」

ラルムが一角を指差した。

紫のクッションに、透き通った金の美しい石が置かれていた。


「あれです」

ボルドーが一歩下がり、二人の後ろに控える。


「あれ、お父様?」

「これからは二人だよ、ミュウ」


ボルドーが二人に微笑んだ。
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