腹黒スマイル王子
スタジオに行くまで理人はずっと私と手を繋いでいた。


「すみません。途中で抜けちゃって。」


「あー来た来た。ビックリしちゃったよ。いきなりスタジオ飛び出しちゃうから。」


「すみませんでした。

彼女が来てくれてたのに俺調子に乗ってあんな撮影見せて、こいつのこと傷付けちゃって。」


そう言って私を理人の横に立たせた。しかもピッタリと逃げ出さないように。

「あっ、さっきの女の子。」


「さっきはすみませんでした。皆さんにご迷惑おかけして。」


私は思いっきり頭を下げた。


「何だ、彼女が来てるなら言ってくれればいいのに。そうしたらあんなことさせなかったよ。

こっちこそごめんな。」

「いえいえ、そんなとんでもないです。」

両手をブルブル振ってまたまた頭を下げると


「でも、どうすっか。ミカちゃん怒って帰っちゃったんだよね。」

どうしよう。私のせいだ。


「まったくあの子には困ったもんだよ。
彼女さんは気にしなくていいからね。

それにミカちゃんの機嫌を損なわない為に木下さんもあんな要求しちゃったんだよね。
ほんと、気を悪くしないでね。」


木下さん。確かカメラマンさんだったよね。

それにしても機嫌を損なわない為ってなんかミカちゃんのイメージと違うなぁー。

理人が私に小声で、ミカはすごい我が儘で気分屋だから皆が気を使っていつも撮影していることと、だから自分もスタッフの苦労を知ってるからミカに合わせていたことを教えてくれた。

それなら始めに言ってくれれば良かったのに。
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