腹黒スマイル王子
駅を降りた帰り道慣れない松葉杖で歩くのが遅くなると、何も言わずに歩調を合わせてくれる。

理人って俺様なところもあるけど本当はすごく優しい人なのよね。でも他の人にはこんな理人を見せないのは何でなんだろう?
スマイル王子の理人よりこっちの理人の方が私は好きだな。

好き……… って私何言ってるんだろう。理人に失礼だよ。


「………なた 陽向?大丈夫?疲れた?」



「えっ、あっ大丈夫。ちょっと腕が疲れてきただけ。」

「なんならおぶろうか?」


理人が意地悪そうな顔で笑う。


誉めたばっかりなのに、すぐからかうんだから。でもそんな理人にドキドキしちゃうんだよね。

「先輩をからかわないで。」


私ったら先輩だなんて自分が一番気にしてることなんで言っちゃうんだろう。

「年なんて関係ないだろう。それなら俺は男だから弱い女を守るってことで。」


ひょい


松葉杖を取り上げて軽々とおんぶしてしまった。


ちょっとー、恥ずかしいよー。

「だ、大丈夫だから降ろして!」


「無理すんなって。手真っ赤だぞ。もうそんなに人もいないし、第一松葉杖があるんだから周りだってやらしい目でみねぇーよ。」


本当言うと腕がもう限界だったから助かった。何も言わないのに理人は何で分かるんだろう?


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