あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
―空に散る華
第二章 仲夏
第3節 空に散る華
*
翌朝、千代が店にやって来た。
「石丸さんたち、出撃だってね」
千代は笑いながら言ったけど、その瞳の奥底にある複雑な色に、あたしは気づいてしまう。
「うん………明後日の十三時半」
あたしが小さく答えると、千代はこくりと頷いた。
あたしたちは店先に並んで座り、静かに話をした。
千代が石丸さんとの出会いを教えてくれた。
「私の通ってる女学校でね、勤労奉仕で特攻隊のかたのお世話をしているの。
毎日基地の兵舎まで通って、隊員さんたちのお洗濯ものを洗って差し上げたり、靴下なんかの繕い物をしたり、お食事のお世話をしたり。
お食事の後は、みんなで輪になって色んなお話もしたりするの。
最初の頃はね、隊員さんたちと話すのが恥ずかしくて、みんな緊張していた。
そしたらね、石丸さんが私たちの緊張をほぐそうとしたんでしょうね、故郷の盆踊りを見せてくれたの。
あんまり音痴で、しかも不思議な動きをするもんだから、みんな笑ってしまった。
でも、それで恥ずかしいのも飛んでいって、すぐに隊員さんたちと打ち解けてお話できるようになったの。
あぁ、なんて気遣いのできる立派な方なんだろう、って感動したわ」
第3節 空に散る華
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翌朝、千代が店にやって来た。
「石丸さんたち、出撃だってね」
千代は笑いながら言ったけど、その瞳の奥底にある複雑な色に、あたしは気づいてしまう。
「うん………明後日の十三時半」
あたしが小さく答えると、千代はこくりと頷いた。
あたしたちは店先に並んで座り、静かに話をした。
千代が石丸さんとの出会いを教えてくれた。
「私の通ってる女学校でね、勤労奉仕で特攻隊のかたのお世話をしているの。
毎日基地の兵舎まで通って、隊員さんたちのお洗濯ものを洗って差し上げたり、靴下なんかの繕い物をしたり、お食事のお世話をしたり。
お食事の後は、みんなで輪になって色んなお話もしたりするの。
最初の頃はね、隊員さんたちと話すのが恥ずかしくて、みんな緊張していた。
そしたらね、石丸さんが私たちの緊張をほぐそうとしたんでしょうね、故郷の盆踊りを見せてくれたの。
あんまり音痴で、しかも不思議な動きをするもんだから、みんな笑ってしまった。
でも、それで恥ずかしいのも飛んでいって、すぐに隊員さんたちと打ち解けてお話できるようになったの。
あぁ、なんて気遣いのできる立派な方なんだろう、って感動したわ」