あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
「特攻なんて、体当たり攻撃なんて、ただの無駄死にだよ。


あんたたちが命を捨てて敵艦に突撃しても、結局、敗けるときには敗けるんだよ」






すると彰は、「君は珍しいことを言うね」と答えた。






「俺はね、命を捨てるなんて、少しも思っていないよ。


俺は、俺たちは、この命を最大限に生かして……日本を、国民を救うんだ。


そんなに栄誉なことがあるかな」






ーーーあたしには分からない。





ねぇ、彰。




どうして、そんなふうに真っ直ぐに、明るい未来を信じられるの?



自分が死んだ後の未来を。





自分が死んだら国が救えるなんて、どうして信じられるの?





あなたたちが命を落としてまで勝利を手にして、本当に家族が幸せになれると思うの?





そんなのおかしい。



間違ってる。





………でもあたしは、それをこの人たちに納得させるための言葉が、どうしても出てこなかった。





あたしは何も言わずに踵を返す。





無性に悲しくて、悔しくて、どうしようもないくらい、腹立たしかった。






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