上司に秘密を握られちゃいました。
真山さんが言うとおり、デパートは、『夢』を買う場所なのかもしれない。
お正月でもなければ、こんなに贅沢なお菓子の詰め合わせを自分で買ったりはしない。
普段は、手土産にすることはあっても、自分の口に入る機会は少ない。
結局、十一時少し前にすっかり準備が整い、コートまで羽織って、真山さんを待つばかりだ。
だけど、仕事ではないのに真山さんに会えることで、緊張がピークに達していた。
だって、デートみたいだもの。
もちろん真山さんにそんなつもりがないことはわかっている。
“偵察”なわけだし、こうして誘ってもらえるのも、残業のご褒美だろう。
手に汗握りながらソワソワして待っていると、テーブルの上のスマホが震えた。
「もしもし」
すぐに出てしまって恥ずかしい。
まるで、待ち構えていたようだ。