上司に秘密を握られちゃいました。
「僕も知らないよ。ほら、仕事人間だし?」
おどけて言う真山さんは、クスッと笑う。
仕事人間というよりは、情熱あふれる人だ。
でも、真山さんの彼女はさみしいのかな……。
デパートとは反対の方に二駅行くと、裏通りに入っていく。
「あそこ。偶然みつけたんだけど、すごくうまいんだ」
"リアン"という名の店は、小さいけれど客でいっぱいだった。
「いらっしゃいませ。あけましておめでとうございます」
店主らしき人が、笑顔で私たちを迎えてくれる。
「おめでとうございます。正月から大盛況ですね。席、空いてますか?」
「えぇっと、カウンターでもいいですか?」
店内を見渡したけれど、他は空いてない。
「西里さん、いい?」
「はい、もちろん」
そうは言ったものの、カウンターということは、真山さんとの距離が近い。
緊張する。