上司に秘密を握られちゃいました。

「僕も知らないよ。ほら、仕事人間だし?」


おどけて言う真山さんは、クスッと笑う。

仕事人間というよりは、情熱あふれる人だ。
でも、真山さんの彼女はさみしいのかな……。


デパートとは反対の方に二駅行くと、裏通りに入っていく。


「あそこ。偶然みつけたんだけど、すごくうまいんだ」


"リアン"という名の店は、小さいけれど客でいっぱいだった。


「いらっしゃいませ。あけましておめでとうございます」


店主らしき人が、笑顔で私たちを迎えてくれる。


「おめでとうございます。正月から大盛況ですね。席、空いてますか?」

「えぇっと、カウンターでもいいですか?」


店内を見渡したけれど、他は空いてない。


「西里さん、いい?」

「はい、もちろん」

そうは言ったものの、カウンターということは、真山さんとの距離が近い。
緊張する。
< 104 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop