上司に秘密を握られちゃいました。

「あら、公孝(きみたか)君じゃないの」


真山さん、“きみたか”という名前なんだ。
名札には名字しか書かれていなくて、初めて知った。


「あけましておめでとうございます、早乙女(さおとめ)様」


早乙女……様?

名前は清楚だけど……濃すぎるピンクの口紅に、整いすぎた眉。
おまけにとてもいかつい体をしている。

……オネエ、だよね?


「あらー、ここでは百合ちゃんでしょ?」

「あはは。そうでした」


百合ちゃん……と、どういうお知り合い?
真山さんと百合ちゃんの組み合わせは、どう見ても不自然だ。


「ちょっと、彼女できたわけ?」


血走る目でギロッと睨まれてドキッとする。


「いえいえ。同僚ですよ。こちら、うちのお客様で早乙女様」


真山さんに紹介され、慌てて頭を下げる。
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