上司に秘密を握られちゃいました。

「いつもありがとうございます。西里です」

「まぁ、お辞儀の仕方が美しいわね。真山君、食べちゃえばいいのに」

「なに言ってるんですか!」


『食べちゃえば』って……。
容赦ない会話にタジタジになる。

しかも客だと聞いて、思わず仕事モードになった私は、鏡の前で何度も何度も練習した、受付のお辞儀をしてしまった。


「西里さん、下の名前は?」


私たちがカウンターに座ると、真山さんの向こう側に座っていた早乙女様が、体を乗り出して聞いてくる。


「藍華、です」

「それじゃ、あいちゃんね」


早乙女様のペースに、すごい勢いで引き込まれる。
ブラックホール並みの威力だ。


「それで、正月早々口説くわけね」

「違いますって」


真山さんは苦笑する。
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