上司に秘密を握られちゃいました。
ひとりきりなんて、知らなかった。
お母様が亡くなったのは聞いていたけど。
「お父様も……」
「うん。なんというか、もういい歳だしひとりで不自由はしないんだけど、いざというときに頼れる人がいないというのは、心細いものだよ」
これだけしっかりした真山さんが、誰かに頼るというようなことは、ないのかもしれない。
それでも、そういう安心感が欲しいというのにはうなずける。
ひとりは心細いものだ。
実家に父も母も健在の私ですら、たまらなく寂しい夜もある。
そんな時はいつも、家族の声に助けられてきた。
「母を亡くしてから、家族っていいものだなとしみじみ感じてる。
特に、店に来てくださる家族連れのお客様を見るとね」
「そう、ですね」