上司に秘密を握られちゃいました。
私も、父や母と手をつないで、東郷百貨店に行っていた頃のことはよく思い出す。
真山さんがそんな思いを抱えているなんて、意外だった。
リアンを出るといざ出陣。
ライバルデパートの初売りへ向かった。
少し遅めに来たというのに、正面玄関はかなりの人で溢れている。
福袋の紙袋をいくつも持った人もいるし、どこかへ慌てて走っていく人も。
「うわ、すごい」
「ホントだね。僕たちはいつもあちら側だから、客としての戦争はなかなか新鮮だ」
クスッと笑う真山さんは、混雑する入口を抜けるとエスカレーターに向かった。
「催事場、行ってみようか」
「はい」
福袋が集められた催事場は、まるで満員電車のようだ。
昨日、必死に押されるワゴンを支えていたことを思い出す。