上司に秘密を握られちゃいました。
「わっ」
「大丈夫?」
私たちの後からも、人の波が押し寄せる。
そして、商品めがけて容赦なく突進してくるから、転びそうになった。
「はい……」
真山さんが私の腕をつかんでくれたおかげで、なんとか転ばずに済んだものの、客のパワーに圧倒される。
「こっち」
腕をつかんだままの真山さんは、催事場の一番端に私を誘導した。
彼に触れられている部分が、熱を帯びてきて、ドキドキする。
やがて離れていった手を寂しいと思ってしまい、ひとりで頬を赤らめた。
「すごい人……」
「そうだね。大盛況みたいだね」
思わず漏らした言葉に、真山さんが反応した。
東郷百貨店より少し規模の大きいこのデパートの初売りは、いつもニュースに取り上げられる。
「ここは、新しいブランドを積極的に取り入れて成功したんだよ。
他のデパートが思い切った改革をできなかった時代に、一気に客をかっさらっていった」