上司に秘密を握られちゃいました。

「平気、平気」と苦笑する彼は、「これ、買ってくる」とレジに向かう。

彼の手に握られているのは、婦人物の衣料品の福袋の様だ。


「待ってください。これ……」


「婦人物ですよ?」と言いそうになって口をつぐんだ。

そんな基本的なことを間違えるわけがない。
おそらく中身の偵察だ。


「私が買いますから」


福袋にはSサイズと書かれている。
偵察したあと、私にくれるつもりなのかもしれない。


「なに言ってるの。
僕は西里さんを無理やり連れてきたんだから。
悪いけど、少し待っててくれる?」


おそらく、私が買うと言っても、彼は折れないだろう。
それなら……。


「私も一緒に並びます」

「いいよ、いいよ」

「婦人物片手にレジに並ぶ真山さん、変ですよ?」


「それもそうか」と笑う彼は、隣に並ぶことを許してくれた。
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