上司に秘密を握られちゃいました。

おかしそうにクスクス笑う真山さんは、とても優しい目をしている。

そんな真山さんが『俺』と言ったのを聞いて、一瞬心臓がドクンと跳ねた。
ずっと『僕』だったから。


「それじゃあ、遠慮なくいただきます」


真山さんとこんなに楽しい時間を過ごして、お土産付きなんて、得した気分。


「さて、仕事の話はこの辺にして、制服持ってくるよ」


真山さんが立ち上がるのを見て、再び激しく心臓が打ち出す。

本日のメインイベントの始まり。
私にとっては、だけど。


真山さんの足音が二階に上がっていく。

いよいよだ。

今度は、トントントンと軽快に階段を下りてくるのが聞こえて……。


「お待たせ」


彼の手には二着の制服が。

あぁ、これだ。
写真でしか見たことがない、紺のワンピース。
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