上司に秘密を握られちゃいました。
背は……百五十八センチの私より、どう見たって二十センチ以上高く、肩幅はがっしりとしている。
柔らかそうな髪は、無造作なくせ毛風にスタイリングしてあり、奥二重の目は黒目が大きく、鼻立ちは整っていて眉も凛々しい。

濃紺のピンストライプのスーツは、もちろん東郷でオーダーしたものだろう。

体のラインにフィットしていて、実によく似合っている。いわゆる"いい男"だ。


「なにしてる。早く行っておいで」


ラッピング作業を男性社員がしているのを見たことがない私は、驚いた。
だけど、その人は見事な手つきでおもちゃをラッピングしていく。


「はい。すみません。それでは……」


深く頭を下げて、医務室に走った。

幸い出血はすぐに止まった。
念のために絆創膏を多めにもらって売場に戻ると、先ほどの男性が子供相手に楽しそうに微笑んでいた。
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