上司に秘密を握られちゃいました。

彼の透き通った瞳に吸い寄せられる。
その瞳に、自分が映っているのだと思うと、胸の奥がギュッと締めつけられるように苦しくなる。
もちろん、嫌な痛みではない。

もしかして、これが……恋、というもの?

一度も誰かに恋をした経験のない私には、この胸の痛みが恋心だと、確信が持てない。

彼はたしかに憧れの人だったけれど、自分とは違う世界の人、だったというか……。
まさか、彼に告白されるという事態に至るとは、想像すらしていなかった。


「もし西里さんに思う人がいないなら、付き合ってほしい」


男らしくきっぱりと口にした彼は、緊張で震えそうな私から視線をそらさない。


『思う人』、がいるとすれば、それは間違いなく、彼だ。

会社で彼の姿を見かけるたびに胸をときめかせ、話しかけられると、緊張で手に汗握り……。
それでも、話していると楽しくて仕方がない。
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