上司に秘密を握られちゃいました。
私も、幸せな気持ちで満タンだった。
彼の『一番欲しいもの』という言葉に、完全に打ちのめされてしまった。
そんなに大切に思ってくれていたなんて、泣きそうだ。
「ごめん。俺、舞い上がりすぎてるね」
真山さんは、バツの悪そうな顔をして、今度は私の顔を覗き込む。
「いえ。私も、うれしいです」
つい、本音がこぼれた。
「ありがとう。それじゃあ、今日はこれで。
今度の休み、デートしてくれる?」
「はい、もちろん」
「電話する」
真山さんは私がマンションに入るまで見送ると、帰って行った。
「ちょっと、どうしよう」
まさか、あの真山さんの彼女になれるなんて。
美晴の情報では、真山ファンは東郷の至る所にいるらしい。
だけど、彼の彼女になれるのはたったひとり。
それが私だなんて、今でも信じられない。