上司に秘密を握られちゃいました。
シリアスなサスペンスドラマが放送されているテレビをつけてみたものの、まったく集中できなくて、勝手に頬が緩んでくる。
「夢じゃない、よね?」
真山さんがくれたデザート重が、机の上に置いてある。
それに手を伸ばして、チョコレートタルトを取り出し、口に入れた。
「やっぱりおいしい。大丈夫。夢じゃない」
ほろ苦い大人の味で人気のあるチョコレートタルトを、初めて食べた。
タルトを食べながら、思い出すのは真山さんの笑顔。
今まで自分のことを『僕』と言っていた彼が、『俺』と言っていた。
彼の"素"の部分を見たようで、彼との間の距離が、一気に縮まった気がする。
正月早々、おいしいデザートと立派なおせちと……そして、素敵な彼氏を手に入れた。
今年の運を全部使い果たしたかもしれない。
その日は、興奮でなかなか寝付けなかった。