上司に秘密を握られちゃいました。

今までとまったく変わらない様子の真山さんに、ちょっと寂しさを覚える。
だけど、仕事しなくちゃ。


彼は、私に会議室の鍵を預けると、すぐにどこかに行ってしまった。


まだ開店前の静かなバックヤードを通り会議室に向かうと、元旦より大量のおもちゃと絵本が用意されていた。

今日の来客数もかなりの数が予想されている。
また迷子が出るだろう。

おもちゃの整理をしながら、迷子の連絡を待っていると、すぐに内線が鳴った。


その日の迷子は、午前中の三時間だけで八人もいた。
お母さんの方が探している場合を除くから、実際はもっとすごい数のはず。

十三時を過ぎたころ、真山さんがやってきた。


「西里さん、十番どうぞ」


"十番"というのは、休憩のこと。


「でも……」


子供達を放っておくわけにはいかない。
私の代わりがいない。
< 162 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop