上司に秘密を握られちゃいました。

「それならそのまま帰ってくれ。
もう話すことはない」


こんなに冷たい真山さんの姿を初めて見た。

だけど、私の頭は真っ白だった。
こんなにきれいな人と……恋をしていたの?


「公孝さん、お願い。話を聞いて?」


私がいるというのにまったく気にする様子もない彼女は、真山さんに食い下がる。


「佳乃(よしの)。もう俺たちは終わったんだ。失礼するよ」


『終わった』ということは、やっぱり付き合いがあったということ?


私の手首をギュッと握った真山さんは、佳乃さんから逃れるように先を急ぐ。

私はといえば、見てはいけないものを見てしまったかのような感覚に襲われて、ただ唖然としているだけ。


「私はやり直したいの」


後ろで佳乃さんの声がした。

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