上司に秘密を握られちゃいました。
第4章
気がつくと、自分の家にいた。
どうやってたどり着いたのか、さっぱり覚えていない。
バッグの中には、真山さんから預かった鍵が入っている。
幸せの階段を一気に駆け上がったと思っていたのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
スマホを見ると、留守番電話が入っていた。
『藍華、今日はイヤな思いをさせて、ごめん』
真山さんの苦しげな一言に、胸がつぶれそうだった。
くしくも次の日から、正社員として真山さんの手伝いをすることになっていた。
この日を待ち望んでいたのに、気が重い。
「西里さん、頑張ってくださいね」
「はい」
朝、人事に行くと、制服が用意されていた。
濃紺のベストとスカート。
東郷の象徴、赤いリボンは控え目だけどアクセントになっている。
残念ながら受付ではないけれど、やっと夢にまで見た制服を手にできたからか、必要以上に鼓動が速くなる。
売り場の社員と同じ制服を着て、正式に営業本部に配属になった。