上司に秘密を握られちゃいました。
危なかった。
黒のベストの社員のことは気にしていたけど、男性社員はスーツ姿。
胸のネームプレートを外していたら、わからない。
電車に飛び乗りドアが閉まると、やっと肺に酸素が行きわたった気がした。
よりによって真山さんが通りかかるなんて……。
だけど一応受付の人間だと信じてくれたようで、ホッとする。
個人で楽しんでいるだけとはいえ、無断で複製しているなんて、バレたらきっとまずい。
自分の部屋に戻ると、制服を脱いで早速スマホを手にする。
自撮りでは全身を写すのが至難の業だった。でも……。
「わぁ、これ最高!」
真山さんは、足まできちんと入ったものと、上半身だけのものを撮ってくれていた。
しかも、バックの東郷百貨店もばっちり入っている。
まるで、私が欲しかった構図を知っていたかのような写真だった。
早速プリンターで印刷すると、あまりに幸せで頬が緩みっぱなしになる。
「一生の宝物だわ」
これでしばらく忙しくても頑張れそうだ。