上司に秘密を握られちゃいました。

「朝飯、ないんだよ。どうしようか……」

「公孝さん、いつも食べないんですか? あんなに忙しくしてるのに、ダメですよ」


何気なくそう言うと、彼は私を見つめたまま動かない。

あれ? どうか、した?


不安になって彼を見つめていると、コーヒーを持ったまま近づいてきた彼に、キスされる。
今度は私が唖然として彼を見つめると、公孝さんは照れたように微笑み、「うれしいな」とつぶやく。

なに、が?


「会社以外では『公孝』と呼んでくれる?」

「あっ」


早乙女様が『公孝君』と呼んでいるのを聞いてから、彼をそう呼ぶことを実は夢見てきた。

だから、昨日そう呼べて……うれしくて、つい。


「……はい」


今度照れるのは、私の方だった。
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