上司に秘密を握られちゃいました。
「それは事実ではありません。
ラッピングひとつ、かもしれません。
それに伴う売り上げだって些細な上昇でしょう。
ですが、そういう小さなことを大切にしなければ、この先、生き残ってはいけません」
昨年、東郷より一回り規模の小さい百貨店が吸収され、事実上倒産した。
常に新しいことを仕掛けていかなければ、同じ道をたどるだろう。
そのために、公孝さんも奮闘している。
「それが偉そうだって言ってるの。
ちょっと本部に抜擢されたからって、調子に乗りすぎだわ。
そもそも、本部に行けたのだってねぇ……」
もうひとりと顔を見合わせるその人は、女の武器を使ったと言いたいのだろう。
「私は本部希望ではありませんでしたよ?
本当は別の仕事がしたかったんです」
たしかに営業本部は出世街道だし、皆が憧れているのは知っている。
だけど、私はそれより受付に憧れている。