上司に秘密を握られちゃいました。

「西里さんにこの仕事を頼んでいるのは、彼女にラッピングの技術があるからです。
おふたりにも、他の社員を牽引するようななにかしらの技術を身に着けていただきたい。
おふたりに依頼したのは、期待してるからですよ?」


公孝さんの『期待してる』の一言で、ふたりの顔が変わった。

公孝さんは、人の上に立てる人。

もしかしたら……私に対する僻みを耳にして、こんな話をしたのかもしれない。
それに加えて、ふたりをやる気にさせるなんて、なかなかできない。

すぐに彼は出て行ってしまったけれど、ふたりは黙々と作業を始めた。


「ありがとうございました。おかげで、こんなに素敵に仕上がりました」


最後の方はスピードもアップして、残りの数はあっという間に仕上がった。

こうやって人を育てるんだ……。
手伝ってもらえないなら、自分でやればいいと思っていた私は、彼の力量に脱帽した。
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