上司に秘密を握られちゃいました。

「西里さん、十番いいよ」


本部に戻ると、まだ忙しそうにしている公孝さんは、私を先にお昼に行かせてくれる。
すぐに仕事に戻りたかった私は、社員食堂に向かった。


「藍華」


私を見つけた美晴が手招きしている。


「あっ!」


美晴に向かって歩き出すと、突然目の前に足を出されて転んでしまった。
慌てて立ち上がり、振り返ると、そこには受付の制服を着た人が数人、私を見てクスクス笑っていた。


「ごめんなさい。大丈夫?」

「……はい」


あの足の出し方、絶対にわざとだろう。
だけど、証拠があるわけではない。

怒りをぐっと呑み込んで、再び歩き出す。

すると、今度はその人の向かいに座っていた人が、足を出した。


「あら、私も。ごめんなさい」


今度は派手に転ばずにすんだけれど、周りがざわつきだした。

ここまでされると、怒りを通り越して呆れる。
この子供みたいな行為に、負けたりしない。

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