上司に秘密を握られちゃいました。

「東郷の受付は……」


東郷の社員である以上、絶対にこんなことあってはならない。
私はたまらず口を開いた。


「受付は……東郷の顔です。
老若男女に至るまで、憧れるような存在でなければなりません」


私が憧れた受付嬢は、こんな人じゃない。
迷子だった私を優しくなだめてくれた、あの赤い制服の人たちは絶対にこんなことしない。

推測でしかないけれど、そんな確信があった。


「さすが、本部の人は言うことが違うわね」


顔を見合わせて笑う彼女達に、唖然とする。


「立場なんて関係ありません。人として、です」

「偉そうに」


こんな人が受付なんて……。
激しいショックを受けながら、入って来たばかりの食堂を出た。


「藍華!」


すると、すぐに美晴が追いかけてきて、私の顔を覗き込む。

「大丈夫?」

「うん。心配かけてごめんね。
破れちゃったから、着替えてくる」

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