上司に秘密を握られちゃいました。
ストッキングの膝が破れて、うっすらと血がにじんでいる。
「藍華……」
美晴の方が泣きそうだった。
「美晴、ありがとう。
私ね、ずっと受付に憧れてたの。
だからずっと憧れの職場であってほしいの」
私の勝手な願いだろう。
制服好きから始まったけれど、いつの間にか受付そのものへの憧れに変わっていた。
「藍華、ホントあなたって……」
美晴が泣きながら笑った。
そして私も……笑顔を作る。
美晴と別れ更衣室に向かうと、ようやく気持ちが落ち着いてきた。
泣いている場合ではない。
私には時間がない。
本部にいられる間に、ファッションショーの仕事を完璧に仕上げ、恋愛感情で私を引っ張ったという公孝さんに対する汚名も返上したい。
バッグの中を覗いたけれど、ストッキングの替えがなかった。
仕方なく素足のまま売り場へと急ぐ。
靴下売り場は正面受付のそばだった。