上司に秘密を握られちゃいました。
擦りむいたひざの出血は止まった。
だけど、心にできた傷はすぐには癒えない。
それでも、前を見て歩くしか、ない。
入口では、別の受付嬢がにこやかに対応している。
それを見てなんとなくホッとした私は、急いでストッキングを購入し、本部に戻った。
「あれ、ずいぶん早かったね」
「あっ、はい」
結局食事をしていないから当然だ。
「あれっ? ケガ?」
公孝さんは目ざとく私の膝の絆創膏を見つける。
「ちょっと転んでしまいました。ほんと、おっちょこちょいで……」
うまくごまかしたつもりたけど、だまされてくれただろうか。
「それより、真山さん、十番は?」
「うん。それじゃ、ちょっとだけ出てくるよ。これ、頼んでもいい?」
「はい」
心配顔の公孝さんから書類を受け取ると、なんでもなかったように仕事に取り掛かった。