上司に秘密を握られちゃいました。

ひとりで食事を作る気にもなれなくて、公孝さんが連れて行ってくれたリアンに向かった。


「いらっしゃいませ」


相変わらずにぎわっている店内で、ひときわ大きな人を見つけた。
早乙女様だ。


「あら、藍ちゃん」


すぐに私を見つけた早乙女様は、「こっちにいらっしゃいよ」と誘ってくれた。
でも……。
公孝さんのことにあまり触れられたくない私は、一瞬ためらう。


「あら、断るっていうの?」

「いえ……」


結局迫力に負け、早乙女様の向かいに座った。


「食べやしないわよ。どうせ公孝君が食べてるんでしょ?」

「えっと……」


相変わらずのズバズハとした物言いに、タジタジになる。


「あら、真っ赤になって。ウブねぇ」


からかっているのか本気なのか、早乙女様はパクパクと豪快にドリアを口に運ぶ。
< 318 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop