上司に秘密を握られちゃいました。

「で?」


食べ終わった彼女は、スマホでなにやらチェックした後、私の顔をじっと見つめる。
近くて、迫力がありすぎる。


「なにされた?」


確信を持ったような聞き方にたじろぐ。


「……なにも」


公孝さんに伝わったら困ると口をつぐむと「やっぱり藍ちゃんにして正解ね」と訳のわからないことをつぶやいている。


「でもね、公孝君には言いなさい。
あの人忙しいけど、そういうことはちゃんと聞いてくれる人よ」


それはわかっている。
だけど、彼に心配をかけないで乗り越えられるなら、そうしたい。


「藍ちゃん、営業本部おもしろい?」


早乙女様は話を変えた。
もうこれ以上、私がなにも話さないと思ったのかもしれない。


「はい。仕事が多種多様でまったくついていけませんが、自分たちでなにかを生み出すのは楽しいです。でも……」

「でも?」

「もうすぐ異動になると思います」
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