上司に秘密を握られちゃいました。
「うん。……大丈夫、だよ」
東郷百貨店の制服は、いつだって私の憧れだった。
だけど、私が東郷で働きたい理由はそれだけではない。
幼稚園の年少の時、母と一緒に東郷百貨店に行って迷子になった私は、“受付のきれいなお姉さん”に助けてもらったことがある。
最初こそ泣きべそをかいていたのに、憧れの制服のお姉さんが隣にいてくれて、ニコニコだったような……。
制服を見て「かわいい」を連発する私に、こっそり帽子をかぶせてくれたのを覚えている。
そして、私が不安にならない様に、ずっと優しく語りかけてくれたお姉さんに心奪われてしまい、いつか私もここで迷子を助けると決めた。
館内放送で駆けつけてきた母が、迷子になったというのにご機嫌な私に呆れ返ったことは、それから東郷に行くたびに言われ続けた。