上司に秘密を握られちゃいました。

「西里さん」


着替えて出ていくと、公孝さんが呼んでいる。


「はい」

「ごめん、最初の登場の仕方だけど……」

「最初は、左側からの登場です」


初代の制服から始まり、その後年代順に左右交互の登場する予定。

ショーの演出は、女性の方がいいからと、私と中津さんに任せられた。
そのため、公孝さんより詳しい。


「了解。それじゃあリハするからスタンバイして?」

「はい」


彼から離れようとすると、不意に腕を引かれる。


「似合ってる」


耳元でボソッとつぶやいた彼は、「よろしく」と去って行った。
彼に握られた腕が熱い。


一番大きな会議室でリハーサルが始まる。


「左から始めます。タイミングをお知らせしますので、音楽に合わせて覚えてください」


それから素人だらけのショーが始まった。
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