上司に秘密を握られちゃいました。

バックヤードを社員玄関に向かって走り出す。
その途中で、亀井さんが私を見つけてニヤリと笑った。


「ショーは成功させます。東郷の歴史は、私が守ります」


我ながら大きなことを言ったと思う。
だけど、すこぶる本気だった。


「亀井さんも、歴史を作ってきたおひとりじゃないですか? 一緒に頑張りましょう」

「えっ?」


彼女がやったのは、間違いないだろう。
だけど、それを責めている時間すらもったいない。

彼女は私が出られなければいいと思ってしたのだろうけど、突然の演出変更は、失敗を招くかもしれない。
そうなると、私が出られないだけでは済まない。

どうしても、東郷百貨店の歴史に"失敗”という泥を塗りたくない。


そのまま東郷を飛び出した。

私がやらなければならない最終チェックは、公孝さんや中津さんでもできる。
でも、制服は……。

こんなに走ったのは、中学生以来だった。
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