上司に秘密を握られちゃいました。
「ここで降ります」
仕方なくタクシーを降りると、制服を抱えて走り出した。
これでは、さっき直したメイクも無駄になってしまう。
でも、走らなければ間に合わない。
「来た!」
社員用玄関で中津さんが待ち構えていた。
「はぁ、はぁ……」
だけど、息が上がって、返事することもままならない。
なんとか制服を掲げてみせると、中津さんは目を丸くしている。
それもそうだ。
もう二十年近く前の制服を、どこからか調達してきたのだから。
「とにかく、着替えて」
中津さんと一緒にバックヤードを駆け抜ける。
「真山さんに連絡してくる。着替えたらすぐに来てね」
私は頷いて、更衣室に走った。
ロッカーにある鏡を見てびっくり。
髪はぼさぼさ、汗をかいたせいで、塗ったばかりのファンデもよれている。