上司に秘密を握られちゃいました。
せっかくの表舞台なのに……と一瞬へこんだけど、でも!と気合を入れ直す。
私がヨレヨレだろうが、企画が成功すればいい。
中津さんの話だと客も相当集まっているらしい。
持ってきた制服は、もちろん自分用にあつらえたものだから、サイズはぴったりだった。
制服を着て、一度だけ大きく深呼吸する。
ハプニングのおかげか、緊張はない。
あとはリハーサルでやったとおり、舞台を歩くだけ。
「遅れました」
舞台裏に到着すると、公孝さんが心配そうに私のもとに駆け付け、足の先から頭まで視線を移して頷く。
「ありがとう。助かった」
これで予定通り、すべてが整った。
「あなた……」
私を見て声をなくしたのは、亀井さん。
「はい。なにか?」
「なんでも、ないわ」