上司に秘密を握られちゃいました。
音楽が聞こえると、紙袋にビニールカバーをつける決まりになっている。
こんなこと、ここで働くようになるまで知らなかった。
「あぁ、でもこんなに忙しいのに、カバーもなんて……」
美晴は溜息をついている。
「お客様のためよ。頑張ろ」
わりと手先が器用で、なにかを作ることが大好きな私は、こうした作業も嫌いではない。
だけど、私が東郷百貨店で"紹介予定派遣社員"として勤めているのには、他に訳がある。
子供の頃から、ここのエレベーターガール、通称“エレガ”の制服に、大変な憧れを抱いていたのだ。
特に虜になったのは……真っ赤なスタンドカラーのジャケット。
黒のパイピングが施されていて、ウエストはかなり絞られていた。
そしてスカートは、黒のボックスタイプで、裾には赤のパイピングが施されてあった。
さらに、赤に黒のラインが入った上品な帽子は、私の憧れの的だった。