上司に秘密を握られちゃいました。
「藍華、聞いたよ!」
更衣室を入ると、美晴が飛んでくる。
「婚約おめでとう!」
「ありがとう、美晴」
「おはよう」を言う隙すらなく聞こえてきた祝福の言葉に、じんわりと心が温まる。
「うれしいよ、私」
自分のことのように喜んでくれる美晴は、今まであった出来事を知っているからか、泣きそうな顔をしている。
「ホントにありがとう。今日からまた頑張るね。よろしく」
「うん! それじゃあ、先に行くね」
もう着替え終わっていた美晴は、一足先に更衣室を出て行った。
自分のロッカーを開けると、真新しい受付の制服。
「よし」
亀井さんがいる受付に行くのは、ちょっと勇気がいる。
だけど……私には公孝さんがいてくれる。
ついに、受付の制服に袖を通すと、緊張で震え、手に汗握る。
私にとってこの制服は、それほどまでに神聖な物。
だけど、希望したからには、全力で取り組みたい。
更衣室を出る前に、各売り場をもう一度確認しておこうと資料を広げた。