上司に秘密を握られちゃいました。
「今日は物産展で、販売開始時間にお客様が走られるわ。安全に注意して」
「はい」
突然後ろから話しかけられ振り向くと、そこには亀井さんがいた。
「あっ、あの……。本日からお世話になります」
亀井さんは受付では一番のベテランだ。
慌てて頭を下げると、「大丈夫」と聞こえた気がした。
「西里さんなら大丈夫よ」
「……はい。頑張ります」
意地悪をされてきた彼女に、そんな言葉をかけられるとは予想外だった。
「今までごめんなさい」
「えっ?」
唖然として亀井さんを見つめると、「佳乃にも言っておいた。西里さんには勝てないよって」と、うつむき加減でつぶやくから、息をするのも忘れそうだった。
まさか……彼女が佳乃さんにそんなことを言うなんて。