上司に秘密を握られちゃいました。
意地悪なことはされたけど、彼女は受付の中では一番の功労者だと聞いている。
勤めている期間が長いというのもあるけれど、困ったら彼女に聞けば、すべて解決するという噂も耳にした。


「ありがとう。西里さん」


深々と頭を下げる彼女を見て、きっとうまくやっていけると確信した。


「そろそろ、時間ですね」

「そうね。それじゃあ、行きましょう」


背筋をピンと伸ばした亀井さんと一緒に、更衣室を出た。


「今日は私が指導します。まずは、正面玄関を経験してもらうね」

「はい」


正面玄関に並べるんだ!
まだ見習いとはいえ、いきなりの大仕事に舞い上がる。


「開店時のご挨拶からね。
知っているかとは思うけど、開店の時は警備員がカギを開けます。
その時、一列になってお出迎えするの」


もちろん知っている。
あの光景にどれだかけ憧れてきたことか。

開店と同時に、受付が同じ角度で頭を下げ客を迎え入れる。
ビシッとそろった動作は、気持ちがいい。
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