上司に秘密を握られちゃいました。

そろった声を聞き、気持ちが一層引き締まる。


「開店五分前です」


警備員もやって来た。
私は亀井さんの隣に立って、背筋を伸ばした。


入り口のドアの向こうには、もうすでに多くのお客様の姿が見える。

なんでも、物産展の十時の限定品に並ぶ人たちらしい。
あと一時間あるのに。


警備員がカギを開け始めると、一番端に立っていた私の横にも誰かが立った。
顔を動かしてはいけないと教えられていた私は、それが誰か確認できない。

だけど、スーツがチラッと目に入る。
男の人の様だ。


「いらっしゃいませ」


亀井さんと同じように臍の辺りで手を重ね、背中を丸めることなく体を倒してお辞儀をすると、すごい勢いで人がなだれ込んできた。
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