上司に秘密を握られちゃいました。

「残念ですが、母は五年ほど前に他界してしまいまして……」


ハッと口を手で押さえた。
触れてはいけない話だったのかもしれない。


「すみません。余計なことを……」

「いえ、気にしないで。それに西里さん、習わなくても十分いけますよ」


お母さんのことを思い出させてしまったと慌てたけれど、真山さんはにっこり笑ってくれた。


「そうでしょうか……。もっとうまくなって、お客様に喜んでいただきたいです」

「いい心がけですね。僕も見習わなくては」

「いえ、そんな……」


こうやって話すのは初めてだというのに、会話がスムーズに運ぶ。


「西里さんは、どうしてうちに?」


ドクンと心臓が跳ねた。
当然の質問だけど、制服フェチがバレないようにしなくては。


「えぇっと……小さな頃、ここのエレベーターガールに憧れまして……」

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