上司に秘密を握られちゃいました。
「仕方ないな」


なにが"仕方ない"のか説明できないけど、浴衣と一緒に用意した肌襦袢を彼女の背中から掛けた。


「こっち向いて?」


もうこのころになると、暗闇でも彼女の姿が見える。
人間の目の適応力に感謝しながら、恥ずかしそうに必死に肌襦袢を押さえている彼女を見て、口元が緩んでしまう。


「ほら、合わせが逆だ」


そう言いながら彼女が押さえていた前合わせを開き、左前に変えた。
もちろん、チラッと下着姿を拝むのも忘れずに。

それから藍華は、なすがままだった。
着物を羽織り、帯を締めるまで、なにも言葉を発しない。


「ほら、できたぞ」


途中でつけた電気の下で、彼女の目が輝いている。

制服が好物の藍華は、きっと浴衣も好きに違いない。
だって、俺も好きだから。
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