上司に秘密を握られちゃいました。

「真山、クレーム対応頼めるか?」


十八時近くになって、部長からの指示が飛ぶ。

はぁ……。
他の仕事ならいくらでも近藤に押し付けられるけど、誰もがイヤがるクレーム対応までさすがに頼めない。


「わかりました」


渋々席を立つと、売り場に向かった。
クレーム対応は三十分ほど続いた。

クレームというより、返品したいのにレシートもない。
しかも買ってからもう一か月以上も経つということで、こちらの落ち度ではなかった。

だけど、客の怒りが収まるまで話を聞き、何度も「申し訳ありませんが、返品を承れません」と頭を下げていると、そのうち怒りもとんで帰ってくれた。

これからも許さなくてはならなくなるから、特例を作るわけにはいかない。

しかも客は、自分の落ち度に気がついていて、それでも沸々とこみあげてくる怒りを誰かにぶつけたかっただけ。
だから話を聞いているうちに、少しずつ気持ちの高ぶりがおさまっていった。
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