上司に秘密を握られちゃいました。
「部長、クレーム対応終わりました。それではお先に失礼します」

「はっ……」


営業本部に駆け込んで、再び飛び出そうとすると、部長が唖然としている。
そして、今日が夏祭りだと知っている近藤は、クククと声をかみ殺して笑っていた。


予定より三十分ほど遅く家に帰ると、玄関まで出てきた藍華は、もう浴衣を着ていた。
俺が着せてやる予定だったのに……。

器用な彼女は、一度見ていただけで覚えてしまったらしい。


「ごめん、遅くなって」

「いえ。中津さんが、すごい勢いで飛び出して行ったよって、メールくれて……」

クソッ。
中津にまでバレてるのか。
でも、そんなことより……。


「やっぱり似合ってる」


今日はヘアアレンジも済んでいる。
俺の言った通り、髪をアップにして無造作に散らし、大きな花を飾っている髪形も、器用な彼女ならではの技。
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