上司に秘密を握られちゃいました。
「すぐに着替えるから、待ってて」
バタバタと部屋に走り込み、自分も浴衣を纏う。
浴衣なんて、催事を担当していた時以来だった。
「お待たせ」
慌てて玄関に向かうと、彼女は目を丸くして固まっている。
「どうした?」
「公孝さんが、あんまり素敵で……」
もう……祭りはやめて、今すぐ抱きたい。
だけど、さすがにそんなこともできず、「ありがと」と笑ってみせると、彼女は頬を赤らめた。
祭りに向かう途中、藍華は俺の腕に手を回してつかまってくる。
恥ずかしがり屋の彼女の、精一杯の愛情表現だとわかっているから、余計にうれしい。
祭りの会場は、満員電車の様だった。
彼女がはぐれないようにと肩に手を回して歩いていると、恥ずかしそうにはにかむ姿を見て、無性に愛おしくなる。