上司に秘密を握られちゃいました。

「すぐに着替えるから、待ってて」


バタバタと部屋に走り込み、自分も浴衣を纏う。
浴衣なんて、催事を担当していた時以来だった。


「お待たせ」


慌てて玄関に向かうと、彼女は目を丸くして固まっている。


「どうした?」

「公孝さんが、あんまり素敵で……」


もう……祭りはやめて、今すぐ抱きたい。

だけど、さすがにそんなこともできず、「ありがと」と笑ってみせると、彼女は頬を赤らめた。

祭りに向かう途中、藍華は俺の腕に手を回してつかまってくる。
恥ずかしがり屋の彼女の、精一杯の愛情表現だとわかっているから、余計にうれしい。

祭りの会場は、満員電車の様だった。
彼女がはぐれないようにと肩に手を回して歩いていると、恥ずかしそうにはにかむ姿を見て、無性に愛おしくなる。
< 435 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop