上司に秘密を握られちゃいました。
「なににする?」
席に案内されるとメニューを渡してくれた真山さんは、自分もメニューを広げた。
憧れの人と食事できるなんて、残業もたまにはいい。
トマトソースがおいしいと聞いたからには食べてみなくちゃ。
「私、ナスのミートソースにします」
「おっ、お目が高い。僕もそれ好きだよ」
ずっと緊張していたけれど、真山さんはとても話しやすい雰囲気を作ってくれる。
「それじゃあ僕は……モッツァレラチーズのミートソースにしよう」
結局ふたりともミートソースだ。
「突然誘ってごめんね。彼氏、怒らないかな?」
「いえ。彼氏なんていませんから」
「えー、そうなの?」
すごく驚いた顔をする真山さんに、こっちが驚く。
彼氏と呼べる人は、今まで一度もいたことがないのに。