上司に秘密を握られちゃいました。

「その通りかもしれません。
昔は働く方にも夢があった気がします。
母はエレベーターガールに誇りを持っていましたし、特別な場所で働いているという自信というか……」


真山さんは小さくうなずきながら、言葉を探す。


「だから、働いている人の意識が、もっと高かったのかもしれません」


気が付けばパスタを食べるのも忘れ、話に夢中になっていた。

きっかけはエレガの制服だった。
だけど、やっぱり東郷百貨店自体が好きなのだ。


「あっ、ごめんね。食べて?」


バツの悪そうな顔をした真山さんは、私にパスタを勧めた。


「これだから彼女ができない。呆れたでしょう?」

「いえ、とんでもない。すごくすごく楽しいです」


それはホントだ。
こんなに話の合う人に、初めて出会った。

価値観が同じと言ったら、彼に失礼かもしれないけれど。
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